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アトラスコプコ_圧倒的な競争優位性が強み

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アトラスコプコ_圧倒的な競争優位性が強み

会社員投資家のひよこです。
スウェーデンの大手産業機器メーカーであるアトラスコプコ社を紹介します。

この記事は、過去記事「投資信託「長期厳選投資おおぶね」のポートフォリオ分析①」の続きとなります。過去記事も併せて読んで頂けると理解が深まると思います。

投資信託「長期厳選投資おおぶね」のポートフォリオ分析①

アトラスコプコ社とは

アトラスコプコ社(Atlas Copco AB)は、グローバルで産業用機器を製造するスウェーデン企業です。事業内容はコンプレッサー機器、真空機器、産業機器、建設機械など産業分野で欠かせない製品やシステムの開発を行っています。日本企業で例えてみると三菱電機やIHIような事業を持つ会社です。

出所:アトラスコプコ社2020年アニュアルレポートより一部加筆して転載20210311 Annual report incl. sustainability report and corporate governance report 2020 (atlascopcogroup.com)

■アトラスコプコの事業別売上高

出所:アトラスコプコ社2020年アニュアルレポートより転載20210311 Annual report incl. sustainability report and corporate governance report 2020 (atlascopcogroup.com)

アトラスコプコの事業別売り上げ比率から、コンプレッサー機器事業と真空機器が強みであることが分かります。この2つの事業はグローバルでトップシェアを誇り、その他事業でも上位シェアを持っています。

産業機器類は「高い品質」と、保守点検や定期更新などの「アフターサービス」が必須となる製品です。

例えばコンプレッサーは空気を圧縮し、強い圧力をかけて送り出す装置のことで、連続的にモノを生産する工場では一般的に使用されますが、使用する工場側にとっては要と言っていいほど重要な機器でもあります。一度故障してしまえば工場での安定した連続生産ができなくなるため、大きな損失に直結します。

製品の信頼性とアフターサービスが重視される産業機器の分野は、トップシェアの大手メーカーほど製品開発力に優れ、キメ細やかなサービスが可能となります。すでにトップシェアを有するアトラスコプコは、トップシェアであることが強い競争力を維持する理由になり、同社の強みとなっています。

出所:アトラスコプコ社2020年アニュアルレポートより転載20210311 Annual report incl. sustainability report and corporate governance report 2020 (atlascopcogroup.com)

■アトラスコプコのエリア別売上高

同社の事業エリアは、アメリカ、ヨーロッパ、中国が中心です。日本の比率は約3%ほどで大きくありません。

出所:アトラスコプコ社2020年アニュアルレポートより転載20210311 Annual report incl. sustainability report and corporate governance report 2020 (atlascopcogroup.com)

アトラスコプコはスウェーデン-ストックホルムの証券取引所に上場しており、シンボルは「ATCO-A」です。

ただし、 現在大手ネット証券3社(マネックス証券・SBI証券・楽天証券)では、欧州株の取引に対応していません。欧州株を取引するには、大手証券会社の店頭取引、もしくは欧州株取引に対応したネット証券会社(サクソバンク証券など)に口座を作る必要があります。

一般の個人投資家には手数料や語学、税処理の面で少しハードルのある銘柄です。

株価チャート

長期の株価チャート

出所:Tradingviewで自己作成し転載

値動きが大きいですが、綺麗な右上がりチャートの長期上昇銘柄です。10年前に投資できていたらテンバガー銘柄でした。

直近5年間の株価チャート

出所:Tradingviewで自己作成し転載

直近5年間の株価チャートでも、コロナショック後からの株価の伸びが大きいです。産業機器銘柄はシクリカル銘柄(景気敏感銘柄)と呼ばれ、世界の景気状況との関係性が大きいことが特徴です。つまり、好況時には株価が上昇しますが、不況時には下落する傾向があります。

現在はコロナショック時に停止した工場が再開したり、生産ラインの増設が急増しているため、産業機器への継続的な需要増加が見込まれることから、同社への期待が直近の株価として表れています。

業績推移

アトラスコプコの直近の売上高は約998億スウェーデンクローナで、日本円換算では約1兆2,679億円です。(執筆時為替レートから計算:12.70スウェーデンクローナ/円)
利益率は10%~20%の水準であり、産業機器メーカーとしては非常に高い水準です。
(三菱電機2020年度利益率:5.0%, 同社IR資料より)

一方で、業績の安定性については、シクリカル銘柄のためサイクル傾向が見られます。十分な利益を出している範囲でのサイクルなので問題ありませんが、不況時には業績が落ちやすいの銘柄です。

配当金

直近の年間配当利回りは1.20%です。(Investing.comデータから引用)

投資アイデア

私の考え方や投資アイデアを紹介します。

この銘柄は、農林中金バリューインベストメンツ株式会社の投資信託である「 農林中⾦〈パートナーズ〉おおぶねグローバル(⻑期厳選) 」の上位構成銘柄に入っていたことから調査しました。

(以下、「長期厳選投資おおぶね」と記載します)

長期厳選投資おおぶねの構成銘柄Top10

 企業名組入比率
13Mアメリカ4.3%
2テキサス・インスツルメンツアメリカ4.1%
3アトラスコプコスウェーデン4.1%
4ベリスク・アナリティクスアメリカ4.0%
5マコーミックアメリカ4.0%
6シャーウィン・ウィリアムズアメリカ4.0%
7エルメス・インターナショナルフランス3.9%
8ラショナルドイツ3.9%
9コストコホールセールアメリカ3.9%
10ギーネリッツスイス3.9%
出所:農林中金バリューインベストメンツ株式会社HPid401002_report1_210421.pdf (nvic.co.jp)
※2021年3月末月次運用レポートから自己作成

「長期厳選投資おおぶね」は強い企業へ長期的に投資する方針です。ファンドのHPには投資対象を「構造的に強靭な企業」と定義し、その特徴を3つ挙げています。

①付加価値の高い事業
 ⇒問題を解決することで高い収益を上げている事業であること

②圧倒的な競争優位性
 ⇒他社が真似できない高い技術や独自サービスを持っていること

③長期的な潮流
 ⇒人口や環境など変化によって長期的に市場が拡大する分野の事業であること

アトラスコプコは、上記の中でも「②競争優位性」と「③長期的な潮流」に特徴を強く持っています。競争優位性は、現時点でトップシェアの製品群を持っていることです。また、産業用機器は世界中の工場で共有して使用される製品のため、世界経済の成長という長期的な潮流にも当てはまる企業です。

アトラスコプコに投資すべきと思うか

私がこれからアトラスコプコ株に投資するかと問われると、「投資しない」と判断します。

その理由は、「株価収益率」と「シクリカル銘柄」の2点から判断しました。

理由1:株価収益率

直近の株価収益率は45倍で、非常に割高な株価が付いています。 (Investing.comデータから引用)
これは同社の競争優位性と成長性が評価されているためですが、株式投資で利益を得るには株価が現在よりも上がる必要があります。つまり、現在の高い期待値を更に上回る必要があるため、私はこれから投資して大きな利益に繋げられるイメージを持てませんでした。

理由2:シクリカル銘柄

私はシクリカル銘柄へ投資するタイミングは、大きな経済ショック後だけと決めています。景気状況に影響を受けるシクリカル銘柄は、経済ショック後に株価は大底を付ける傾向があります。

私は次の経済ショックが起きるタイミングを予想できませんが、株価が大きく下落することがあれば経済ショックが起きたと認識できます。そのタイミングでシクリカル銘柄に投資すれば、大きな利益が得られる可能性が高いと考えています。

逆に経済ショックが起きる前に投資した場合、株価下落期に大きな損失になる可能性があるため、投資しないと決めています。

まとめ

「長期厳選投資おおぶね」の上位構成銘柄「アトラスコプコ」を分析しました。

現在の株価は非常に割高であり、シクリカル銘柄でもあるので投資しない判断をしていますが、圧倒的な競争優位性を持つ企業です。

次の経済ショック時に株価が大きく下がれば投資チャンスとなるので、忘れずに株価動向をチェックしたい銘柄だと思います。

では!

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