ヘルスケアセクターETFの「XLV」を紹介します。
米国株のセクター分類
米国株は世界産業分類基準(GICS)を使って11種の産業セクターに分類できます。
GICSは、S&Pダウジョーンズインデックスとモルガン・スタンレーが作成した産業分類です。
米国株の産業セクター11種
一般消費財、エネルギー、金融、情報技術、公益事業、資本財、生活必需品、素材、ヘルスケア、不動産、通信サービス
各産業セクターの代表的な企業は以下の通りです。
セクター | 代表的な企業 |
一般消費財(Consumer Discretionary) | アマゾン・ドットコム、テスラ、ホーム・デポ |
エネルギー(Energy) | エクソンモービル、シェブロン、コノコフィリップス |
金融(Financials) | バークシャー・ハサウェイ、JPモルガンチェース |
情報技術(Information Technology) | アップル、マイクロソフト、エヌビディア |
公益事業(Utilities) | ネクステラ・エナジー、デューク・エナジー、サザン |
資本財(Industrials) | ハネウェルインターナショナル、ユナイテッドパーセルサービス |
生活必需品(Consumer Staples) | プロクター&ギャンブル、ペプシコ、コカコーラ |
素材(Materials) | Linder PLC、シャーウィン・ウィリアムス |
ヘルスケア(Health Care) | ジョンソン・エンド・ジョンソン、ユナイテッド・ヘルス・グループ |
不動産(Real Estate) | アメリカン・タワー、プロロジス |
通信サービス(Communication Services) | フェイスブック、アルファベット、ネットフリックス |
S&P500の産業セクター別構成比
S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成され、米国大型株の株価動向を表す指数として広く認められています。
S&P500の産業セクター別構成比は以下の通りです。
ヘルスケアセクターはS&P500の構成銘柄の約13.37%を占める2番目に大きなセクターです。
ヘルスケアセクター
ヘルスケアセクターは、医薬品、医療サービス、医療機器(試薬製造)、バイオテクノジーに関連する企業で構成されています。
<医薬品企業の代表例>
ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー、メルク
<医療サービス企業の代表例>
ユナイテッド・ヘルス・グループ、アボットラボラトリーズ
<医療機器(試薬製造)企業の代表例>
サーモフィッシャーサイエンティフィック、イルミナ
<バイオテクノロジー企業の代表例>
アッヴィー、モデルナ、アムジェン
ヘルスケアセクターには、「ディフェンシブな超大型銘柄」から「最先端科学で勝負する小型グロース銘柄」までを含めた特徴の異なる多様な企業が分類されます。
XLVの特徴
XLVはS&P500に含まれる米大型企業の中から、ヘルスケアセクターに分類される企業を構成銘柄としたETFです。
特徴 | XLV(ヘルスケアセクターETF) |
発行元 | ステート・ストリート社 |
設定日 | 1998年12月 |
ベンチマーク | ヘルスケア・セレクト・セクター指数 |
組入れ銘柄数 | 64銘柄 |
ファンド資産 | 約3,271億ドル |
経費率 | 0.12% |
直近配当利回り | 1.33% |
引用元:https://www.ssga.com/us/en/intermediary/etfs/funds/the-communication-services-select-sector-spdr-fund-xlv(21年9月26日公開データから引用)
XLVに含まれる企業の業種別構成比は以下の通りです。
XLVを構成する企業の内、上位3業種(医療機器・医薬品・医療サービス)で約75%を占めます。
医療機器・医薬品・医療サービスに関連する企業は非常に大型の銘柄が多く、景気に左右されにくいディフェンシブな銘柄です。
以上から、XLVは景気の変動に影響を受けにくく、長期間安定した値動きをする特徴があります。
XLVの構成銘柄
上位15銘柄のティッカーシンボルと構成比率をまとめました。
銘柄 | シンボル | 構成比率 | |
1 | ジョンソン・エンド・ジョンソン | JNJ | 8.60% |
2 | ユナイテッド・ヘルス・グループ | UNH | 7.62% |
3 | ファイザー | PFE | 4.91% |
4 | サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック | TMO | 4.74% |
5 | アボット・ラボラトリーズ | ABT | 4.40% |
6 | ダナハー | DHR | 4.09% |
7 | アッヴィ | ABBV | 3.76% |
8 | メルク | MRK | 3.66% |
9 | イーライリリー | LLY | 3.65% |
10 | メドトロニック | MDT | 3.48% |
11 | モデルナ | MRNA | 3.16% |
12 | ブリストル マイヤーズ スクイブ | BMY | 2.67% |
13 | インテュイティブ・サージカル | ISRG | 2.46% |
14 | アムジェン | AMGN | 2.42% |
15 | CVS・ヘルス・コーポレーション | CVS | 2.22% |
引用元:https://www.ssga.com/us/en/intermediary/etfs/funds/the-real-estate-select-sector-spdr-fund-xlv(21年9月26日公開データから引用)
XLVを構成する上位15銘柄は日本でも有名な企業が多く、これらの銘柄は景気変動に左右されることが少なく、巨額の利益を稼ぎ出す優良企業です。
ただし、ヘルスケア企業のデメリットとして以下の2点が挙げられます。
<ヘルスケア企業のデメリット>
①新薬や医療技術の開発に巨額投資が長期間必要であること
②「特許権の権利切れ」や「薬害・医療事故訴訟」などのリスクを抱えること
特に②のデメリットは事業破綻に至る可能性があり、ヘルスケア企業の個別銘柄への投資は上級者向けの投資戦略です。
一方、XLVは大型ヘルスケア企業を抽出してインデックス投資できるため、ヘルスケアセクターの利点を最大限享受しつつ、個別企業の破綻リスクを最小限にできる優れたETFと言えます。
XLVの株価動向
XLVの長期株価チャートです。
XLVはリーマンショックやコロナショックといった経済危機が発生しても株価の大きな下落がなく、長期的に株価が大きく上昇したことが最大の特徴です。
セクター別ETFの騰落率(2021年度)
ステートストリート社から発行されているセクター別ETF11種の年初来騰落率を以下に示します。
セクター | ETF名 | 年初来騰落率 |
エネルギー | XLE | 34.09% |
金融 | XLF | 31.43% |
不動産 | XLRE | 29.76% |
通信サービス | XLC | 24.02% |
情報技術 | XLK | 22.53% |
ヘルスケア | XLV | 16.85% |
資本財 | XLI | 16.71% |
一般消費財 | XLY | 15.98% |
素材 | XLB | 13.07% |
公益事業 | XLU | 6.58% |
生活必需品 | XLP | 5.85% |
S&P500 | SPY | 20.37% |
※2021年9月24日終値の株価から年初来騰落率を算出
ヘルスケアセクターETFの年初来騰落率は+16.85%であり、S&P500をパフォーマンスよりも劣っていたセクターでした。
これは2020年のコロナショック時にほとんどセクターが株価を落としたのに対し、ヘルスケアセクターは小さな値下がりしかありませんでした。そのため2020年の株価をベースとした2021年の上昇率は低く計算されてしまうことが理由です。
しかし、XLVは経済危機に強く、長期間安定したパフォーマンスが得られることがメリットであり、長期保有することに向いた銘柄です。
特に資産の大きな値下がりを避けたい方には、XLVをポートフォリオに加えてヘルスケアセクター企業の構成比率を上げることがおすすめの投資戦略と言えます。
まとめ
XLVはS&P500インデックスに含まれる米国大型企業の中から、ヘルスケアセクターに分類される企業のみを構成銘柄としたETFです。
ヘルスケアセクターの銘柄は、景気変動に左右されにくく、経済危機時の値下がりが小さいことが特徴です。
ヘルスケアセクターに分類される米大型企業への投資比率を高めたい方におすすめのETFです。
では!